
いびきは眠りの深さとどう関係するのか
「いびきをかいているときはよく眠れている証拠」と思っていませんか?
実はそれ、大きな誤解かもしれません。いびきと睡眠の深さには密接な関係があり、いびきをかいているからこそ眠りが浅くなっている可能性があります。
この章ではまず、眠りの深さのメカニズムと、いびきがどのタイミングで発生しやすいのかを理解することから始めましょう。
浅い眠りと深い眠りの違いとは
人の睡眠は「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」を90分ごとに繰り返しており、ノンレム睡眠の中にも浅い眠りから深い眠りまでの段階があります。
睡眠段階 | 特徴 |
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ノンレム睡眠(浅い) | 入眠直後に現れる。脳はある程度活動している状態 |
ノンレム睡眠(深い) | 成長ホルモンが分泌され、身体の回復が行われる |
レム睡眠 | 夢を見ることが多く、脳が活動している状態。身体は深く休んでいる |
本来、深いノンレム睡眠の時間帯には筋肉がゆるみ、呼吸も安定しているのが理想です。
しかし、このバランスが崩れると、いびきや無呼吸を引き起こし、眠りが中断されやすくなります。
いびきが発生しやすいタイミング
いびきがもっとも起こりやすいのは、「筋肉が緩みきる深いノンレム睡眠のタイミング」です。
特に以下のような条件が重なると、喉の空気の通り道(気道)が狭まり、いびきの発生リスクが高まります。
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仰向けで寝ている
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肥満やあごが小さい体型
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飲酒や過度な疲労による筋弛緩
その結果、一度は深く眠りに入っても、いびきや無呼吸によって睡眠が分断され、再び浅い眠りに戻されるという悪循環が起こりやすくなります。
「いびきをかく=熟睡している」というのは大きな誤解で、むしろ睡眠が浅くなっている証拠かもしれないのです。
この章では、いびきがどのようにして睡眠の質を悪化させるのか、また睡眠時無呼吸症候群との関連について解説します。
断続的ないびきが眠りを浅くする理由
いびきをかくことで、本人の自覚がないまま睡眠中に何度も覚醒反応が起こっていることがあります。これは「マイクロアラウザル(微細覚醒)」と呼ばれ、数秒程度の短い目覚めですが、これが繰り返されることで次のような悪影響が生じます:
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深いノンレム睡眠が得られない
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成長ホルモンや修復系ホルモンの分泌が妨げられる
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日中の眠気や集中力の低下が起こる
つまり、本人は「一晩寝たつもり」でも、実際には断続的に浅い眠りを繰り返しているため、疲れがとれず、だるさが残るという状態になってしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群との関係
いびきが断続的で、「途中でいびきが止まってまた再開する」「大きないびきのあとに無音が続く」という場合は、**睡眠時無呼吸症候群(SAS)**の可能性があります。
SASでは、喉の空気の通り道が一時的にふさがり、10秒以上の呼吸停止が一晩に何度も起こります。そのたびに体は無意識に覚醒し、呼吸を再開するために筋肉を動かします。
この状態が毎晩続くと、以下のような問題に発展します:
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深い睡眠が極端に減る
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自律神経のバランスが崩れ、心疾患や高血圧のリスクが高まる
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脳の記憶処理や免疫機能にも悪影響
つまり、いびきが睡眠時無呼吸のサインである場合、それは**命に関わるレベルの「眠りの質の崩壊」**ともいえるのです。
眠りの質を上げるためにできるいびき対策
いびきによって眠りの質が下がるのを防ぐためには、生活習慣の見直しや適切なグッズ・医療的アプローチを組み合わせて対策を行うことが重要です。
ここでは、今日から始められる実践的な方法を紹介します。
生活習慣の見直しでいびきは改善できる
日々の習慣がいびきの発生に影響することは少なくありません。以下のような改善が、いびきの軽減と深い睡眠の確保につながります。
改善項目 | 内容 |
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寝る姿勢 | 仰向けではなく、横向きで寝ると気道が確保されやすい |
アルコールの摂取 | 就寝前の飲酒は喉の筋肉をゆるめ、いびきを悪化させる |
運動習慣 | 首まわりや体幹の筋力を維持することで気道が安定しやすくなる |
食生活の改善 | 肥満による気道の圧迫を防ぐため、バランスのよい食事を意識する |
特に肥満がある方は体重管理が非常に重要です。わずか5%の体重減少でもいびきの改善につながるという報告もあります。
グッズや治療法を上手に活用する
生活習慣の改善だけで効果が薄い場合は、いびき対策用のグッズや医療機器の活用も検討しましょう。
主なグッズ・治療法一覧
対策方法 | 特徴 |
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マウスピース(口腔内装置) | 下顎を前に出すことで気道を広げる。軽度〜中等度の無呼吸に効果あり |
いびき防止枕 | 頭と首の角度を調整して気道を確保しやすくする |
口閉じテープ | 鼻呼吸を促し、口呼吸によるいびきを軽減する効果がある人も |
CPAP装置 | 重度の睡眠時無呼吸症候群に使われる医療機器。空気を送り込み気道を開く |
これらを使いながら、必要に応じて耳鼻咽喉科や睡眠外来で検査を受けることで、より適切な対策が可能になります。
まとめ
いびきは「眠りが深い証拠」だと思われがちですが、実際には眠りの質を妨げる重大なサインである可能性が高いです。
とくに、睡眠中に繰り返されるいびきや無呼吸は、深いノンレム睡眠を分断し、心身の回復機能を大きく低下させます。
この記事のポイントを振り返ってみましょう:
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いびきは眠りの深さを妨げる原因になり得る
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深い睡眠が得られず、日中の疲労感や集中力低下に繋がる
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睡眠時無呼吸症候群との関連も強く、放置すると健康被害のリスクが高まる
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生活習慣の見直しや対策グッズ、医療機関の活用で改善は可能
「たかがいびき」と思わず、自分の睡眠の質を見直すきっかけにしましょう。いびきを改善することは、深く質の良い眠りへの第一歩です。
参考記事
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睡眠時無呼吸症候群とは?睡眠と健康の関係|厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html -
睡眠の深さと回復力の関係|ナゾロジー
https://nazology.net/archives/107031 -
いびきと無呼吸の違い|日本耳鼻咽喉科学会
https://www.jibika.or.jp/public/disease/sas.html -
睡眠の質を高めるための生活習慣|快眠推進協議会
https://kaimin-suishin.jp/sleep/improve/