
いびきはなぜ起きるのか?メカニズムを理解しよう
「痩せたらいびきが治る」と聞いたことがある方も多いかもしれません。
確かに、肥満はいびきの大きなリスク要因のひとつですが、まずはいびきがなぜ起きるのか、そのメカニズムを理解することが大切です。
気道が狭くなることで発生するいびき
いびきは、睡眠中に空気の通り道(気道)が狭くなり、呼吸の際に粘膜や周囲の組織が振動することで音が出る現象です。
具体的な原因には以下のようなものがあります:
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のど周辺の筋肉の緩み(特に加齢や深い眠りの際)
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舌や口蓋垂(のどちんこ)が落ち込むことによる気道の狭窄
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鼻づまりなどで鼻呼吸ができず、口呼吸になる
そして、気道が狭くなればなるほど、呼吸が苦しくなり、より大きないびきをかくようになります。
肥満によって悪化する理由とは
肥満は、いびきを悪化させる代表的な要因です。理由は主に以下の2つです。
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首周りの脂肪が気道を圧迫する
首の内側や舌の周囲に脂肪がつくと、気道が狭くなり、呼吸時の空気の流れが乱れます。 -
内臓脂肪や全身の代謝異常が呼吸にも影響を与える
肥満は酸素の取り込み効率を下げ、深い呼吸を妨げる要因にもなります。
特に、首まわり(ネックサイズ)が太い人ほどいびきをかきやすい傾向があるといわれており、男性で首回り40cm以上、女性で35cm以上がリスクとされています。
このような背景から、「痩せることで気道が広がり、いびきが改善する」という考え方には一定の医学的な根拠があるのです。
痩せたらいびきは治る?医学的な根拠と実例
「痩せればいびきが治る」とよく言われますが、それは本当なのでしょうか?
実は、体重を減らすことでいびきが軽減されるケースは多く、医学的にもその効果が報告されています。
ここでは、痩せることによるいびき改善の根拠と、実際に効果が出やすい人の特徴を解説します。
痩せたことでいびきが改善する人の特徴
特に以下のような特徴を持つ人は、体重減少によっていびきが軽減・解消する可能性が高いとされています:
特徴 | 説明 |
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肥満傾向がある(BMI25以上) | 脂肪が気道を狭くしている可能性が高いため、減量の効果が期待できる |
首まわりに脂肪がつきやすい体型 | 気道を直接圧迫していた脂肪が減ると、呼吸がスムーズになる |
寝ているときに仰向けでいびきが目立つ | 痩せることで舌根の沈下や軟口蓋の下垂が改善しやすくなる |
実際の臨床研究でも、体重を10%減らすことで睡眠時無呼吸の症状が30〜50%軽減されたという報告があり、いびきだけでなく睡眠の質全体が改善したという例も多数存在します。
また、痩せることはいびきだけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病予防にもつながるため、非常に有効な根本対策といえるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群のリスク低下について
肥満はいびきだけでなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の最大の危険因子でもあります。
SASは、睡眠中に呼吸が何度も止まる疾患で、放置すると心疾患や脳卒中のリスクを高める恐れがあります。
体重を落とすことでSASの重症度も緩和されるため、医師からも「まずはダイエットを」と指導されることが多いのです。
ただし、減量による改善効果は人それぞれであり、完全にいびきが治るとは限りません。
次のセクションでは、痩せてもいびきが治らないケースについて解説します。
痩せてもいびきが治らないケースとは
「痩せたのにいびきが治らない……」と感じる人もいます。
確かに、体重を減らしてもいびきが完全に消えないケースも少なくありません。
ここでは、痩せてもいびきが治らない理由や、その他の原因、代替対策について詳しく見ていきましょう。
骨格や扁桃腺など別の原因の可能性
いびきの原因は肥満だけではなく、構造的な要因も深く関係しています。以下のようなケースでは、痩せてもいびきが続くことがあります:
原因 | 説明 |
---|---|
下顎が小さい・後退している | 舌が気道をふさぎやすくなるため、呼吸がしづらくなる |
扁桃腺やアデノイドが肥大している | 喉のスペースを圧迫し、空気の通り道を狭くする |
鼻づまり(慢性副鼻腔炎、鼻中隔湾曲) | 鼻呼吸ができず、口呼吸になることでいびきを引き起こす |
舌が大きい・舌根沈下 | 痩せても舌が落ち込んで気道を塞ぎやすい |
このような解剖学的な特徴は、ダイエットだけでは改善が難しく、医師の診断と対処が必要になることがあります。
ダイエット以外の対策が必要なケースも
痩せてもいびきが残る場合は、以下のような追加対策を検討してみましょう:
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マウスピース(スリープスプリント)の使用
→ 下顎を前に出して気道を確保し、いびきを防ぐ -
鼻腔拡張テープや口閉じテープ
→ 鼻呼吸を促進し、口呼吸によるいびきを防止 -
睡眠姿勢の見直し(横向き寝)
→ 仰向けで舌が落ち込むのを防ぎ、呼吸が楽になる -
耳鼻咽喉科での検査・治療(扁桃腺や鼻の構造的問題)
→ 手術や薬物療法が必要な場合も
いびきは複数の要因が絡み合って起きる症状のため、「痩せる=必ず治る」わけではないことを理解し、包括的な対策を行うことが大切です。
まとめと参考記事
「痩せたらいびきが治る」という話には、医学的な根拠がある程度存在します。
特に肥満体型で首周りや喉に脂肪がついている場合、体重を減らすことで気道の圧迫が軽減され、いびきが改善されることがあります。
また、痩せることによって睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクも低下するため、健康全体にとってもメリットのある対策といえるでしょう。
ただし、痩せてもいびきが完全には治らない人もいるのが現実です。
その場合は、骨格の問題や扁桃腺の肥大、鼻づまりなど構造的な要因や他の健康問題が関係している可能性があります。
そのため、まずはダイエットを試みつつ、改善が見られない場合は耳鼻咽喉科などの専門医での検査・相談が重要です。
「たかがいびき」と放置せず、睡眠の質を高めて健康な生活を手に入れましょう。
チェックリスト:いびきが気になる人がすべきこと
✅ BMIを確認して肥満傾向がないかチェック
✅ 首まわりに脂肪がついていないか確認
✅ 横向きで寝てみるなど寝姿勢を工夫
✅ 鼻づまりやアレルギーの治療を行う
✅ 改善しない場合は耳鼻科や睡眠外来を受診
参考記事
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睡眠時無呼吸症候群とは?|厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-062.html -
肥満と睡眠障害の関係について|ナショナル睡眠財団
https://sleepfoundation.org/sleep-apnea/obesity-and-sleep-apnea/ -
睡眠時無呼吸症候群と減量効果に関する研究|日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=45 -
睡眠時無呼吸症候群の治療法と診断の流れ|日本耳鼻咽喉科学会
https://www.jibika.or.jp/public/disease/sleep_apnea.html